#2◆ ソフトにんにく注射


「にんにく注射」又は「ソフトにんにく注射」と呼ばれているものはなんでしょうか?それは、ビタミンB1に各種ビタミンを配合した注射のことです。アリナミンを主成分とし、スタミナ、持久力に効果があります。

◆ ビタミンB1は、ダイエット中の人や運動選手に必要です
栄養状態の悪い時代、ビタミンB1の欠乏から起こる脚気(かっけ)は、たいへん多い病気でした。ビタミンB1は糖質のエネルギー変換やアルコールの分解に必要で、最近では本格的な脚気は少ないものの、偏食やダイエット、アルコール依存症でビタミンB1欠乏症の人がいます。
水溶性のビタミンでとりすぎてもすぐに排泄され、体にたまることはありません。
静脈注射でにんにく臭を自覚するので、ビタミンB1の注射はいわゆる「にんにく注射」と呼ばれています。

◆ なぜ「にんにく臭」がするのですか?
京都大学医学部衛生学教室の藤原元典講師(当時)は、ニンニクの絞り汁にB1を加えたところ、添加したビタミンは消失しましたが生物活性は残っていることを発見しました。これはB1がニンニクの成分と結合し、化学測定法にかからない形に変化したものと推定され、ニンニクB1と仮称されました(1951年)。その後の研究により、B1が弱アルカリ性液中でニンニクの臭気成分・アリシンと結合して新化合物ができ、この化合物は腸管からきわめてよく吸収されることが明らかになりました。武田薬品工業の松川秦三・薬学博士は藤原講師と共同研究を始め、わずか4ヶ月でその化学構造を決定し、アリチアミンと命名しました。アリチアミンは内服でも注射同様の吸収率を示す画期的なビタミン製剤でありましたが、分子内にニンニクの臭気成分を含むため、服用すると呼気がニンニク臭くなります。その後、武田薬品工業は多くの誘導体を合成して試験し、プロピル基を導入した新B1誘導体・プロスルチアミンをアリナミンという商品名で1954年に発売しました。